妊娠中のトラブル
妊娠初期[子宮外妊娠]
子宮外妊娠は、受精卵が正常な着床部位以外に着床発育した状態で、時には激烈な下腹痛および出血性ショック症状を呈する、産婦人科領域の代表的な救急医療を必要とする疾患です。受精卵の着床部位により、卵管妊娠、卵巣妊娠、腹腔妊娠、頸管妊娠などに分類されています。
発生頻度は全分娩数の約1%(100人に1人)といわれており、その大部分が卵管妊娠です。また、従来は非常にまれ(3万妊娠に1人)であった子宮内外同時妊娠も、生殖補助医療施行患者では100人に1人とその危険性は著しく増加してきています。
症状
主な症状
無月経
不正性器出血(外出血)
下腹部痛
子宮外妊娠とは受精卵が子宮内膜に根を張って着床してしまうことです。軽い出血が間隔を追ってあったり、持続したりします。出血量は少なく、激しい腹痛があるのが特徴です。卵管内に炎症が起こって卵管の通過が悪くなったり、受精卵を子宮内に運ぶ機能が低下すると、受精卵が卵管内にとどまって卵管妊娠になると考えられます。しかし、これらの機能障害に気づくことは難しく、原因がハッキリしないこともよくあります。
治療・対処法
尿の妊娠反応が陽性にもかかわらず、超音波検査では子宮内に妊娠の部位が見つからない場合に子宮外妊娠が疑われます。逆に、超音波検査で胆のうが確認されれば子宮外妊娠を否定できます。
正常妊娠のごく初期や初期の子宮内流産も同じようにみえるので、慎重な判断が必要です。ほとんどの場合、症状がないことが多く、症状が軽いほど診断に時間を要し、疑いが強い場合は入院して経過をみます。
卵管妊娠以外の子宮外妊娠では、着床部位によって治療法が異なります。間質部妊娠は子宮の楔(けつ)状切除術または場合によっては子宮全摘が必要になります。
治療としては、手術療法・薬物療法・待機療法の3つに大別されますが、それぞれの治療方法に利点と欠点があり、その取り扱いに関して明確な統一見解は定められていないのが現状です。選択の際は、症状や着床部位の他に未婚、既婚、子どもの有無,今後の挙児希望などを考慮して決定します。
手術療法
腔鏡または開腹手術により妊娠部位を見つけ、卵管ごと切除する方法と、妊娠組織を除去して止血し、そのまま卵管を残す方法があります。但し、卵管を取ればその側での妊娠は出来なくなり、残した卵管でも再び子宮外妊娠が起こるリスクもあります。
薬物療法
メトトレキセート(MTX)と呼ばれる抗がん剤の一種である薬剤を用いて治療する方法。全身投与または患部への局所投与が行われます。
しかし、治療期間が長期になる可能性がある、効果が必ずしも確実ではない、症例が限られる、メトトレキセート(MTX)の副作用として脱毛、口内炎などの欠点があります。
待機療法
子宮外妊娠の全てが治療を必要とするわけではなく、約18%は自然に吸収され治癒することもあるとされていることから、厳重なフォローアップのもとに待機療法を選択しても良いと考えられます。