コミュニケーション[子育てエッセイ]
1才6〜7ヶ月
口ぐせの魔法
誰にでもある口ぐせですが、この口ぐせは、実は子育ての中でもとても大切なことなのです。
自分がどのような言葉を選び、使っているかを一つ一つ意識している人は、そうはいないでしょう。言葉は、その人の無意識が表れていると言えるのですが、反対に使う言葉を変えることによって、無意識を変化させることもできるのです。
無意識が受け取る「口ぐせ」
ご両親からいつもいつも言われた言葉はありませんか?その中には、自分の自己イメージにかなり深く関わっている言葉はありませんか?
ある女性タレントは、「自分の中で自信があるところは?」と聞かれて「笑顔」と答えていました。なぜかというと「お母さんから “いつも笑顔がかわいい” と言われていたから」なのだそうです。
このように、私たちは親から言われていた言葉によって自己イメージを作っている場合が多いのですが、このタレントさんのようにいつもステキな言葉をかけられていたら、とても幸せなことだと思います。
ですが、残念ながら、親が子どもに向けてかけている言葉はいつもそのようなステキな言葉とは限らず、意図していることとは違うことが伝わっている場合も多くあります。
例えば、最近はアトピーなど皮膚トラブルを持っているお子さんも多く、ご両親は「今日はちょっとひどいね」、「この子のアトピーがひどくて心配なの」などとおっしゃることもあるでしょう。本当は心配や思いやりから出ている言葉なのに、子どもとっては「ひどい」という言葉をたびたび耳にすることになります。
無意識には主語を抜かしてとらえるという特徴があります。つまり、無意識は「アトピーが」という主語なしで感じていますので、その結果、自分自身のことを「ひどい」と感じることにつながってしまいます。親が「アトピーがひどい」と言うと、本当に子どもの症状が重くなっていくというのは知られた話ですが、それはこのような心の作用によるのかもしれません。
さて、先のタレントさんの話に戻りましょう。無意識は主語を持たないということは、そのタレントさんは「笑顔がかわいい」と言われていたことによって、自分自身がかわいく、愛される存在であるという自己イメージを持っているということになりますね。これはとてもステキなことではないでしょうか?
こういう例もよくあるでしょう。「今日の洋服ステキね」と言われた時、本当は「洋服がステキね」と言われているのに、まるで自分がステキだと言われているように嬉しいこと。それは、無意識は自分のことがステキだと言われているのと同じに受け止めているからなのです。
ちょっとおもしろい例では、これは言葉ではありませんが、ジェットコースターなどに乗って心臓がドキドキしている時に、「好きだよ」、「愛しているよ」と愛の告白をされると、無意識はジェットコースターでドキドキしているのか、告白でドキドキしているのか判断がつかず、その人のことが好きなのだと思ってしまうそうなのです。何だか笑ってしまう話ですが、それほどまでに無意識とはいいかげんなものなのです。
さあ!ここで、いつも自分がどんな言葉を使っているのか、見直してみませんか?
口ぐせには魔法があります。自分がどんな言葉を使い、人にどんな言葉をかけているかによって、自分や子どもの無意識にある自己イメージが全く変わっていくのです。
いつも「ステキね」、「かわいいね」、「素晴らしい」、「きれい」という言葉を使っていると、それが人をほめる言葉であっても、また、洋服や持ち物をほめる言葉であっても、いい自己イメージを作ることができます。ステキな言葉を使う人になれば、ステキな言葉を耳にする回数が誰よりも多いのは、言われている人よりも言っている自分自身ということにもなるのです。
毎日の生活の中で、お子さんにもステキな言葉をかけてあげてください。それがお子さんの自己イメージづくりになっていくのです。「笑顔がかわいい」でも「絵が上手ね」でも、口ぐせのように言うことはお子さんへの大きな贈り物となるでしょう。