コミュニケーション[子育てエッセイ]
5〜6ヶ月
思い通りにならないこと
赤ちゃんの気持ちが分からなくて、困ったことはありませんか?
泣き止まない赤ちゃんに、一緒に泣きたい気持ちになったこともあるのでは?
ママは赤ちゃんの気持ちを汲み取ることができて当たり前だと思っていると、とても苦しくなりますね。本来、人の気持ちは相手には計り知れない深遠なところを持っていて、人の心が簡単にわかるなどということはないのです。赤ちゃんと一緒に一日を過ごすママだからこそ、体験や出来事などを一生懸命考え合わせたり、気持ちを推察したりして、感じ取っていくわけです。それでも赤ちゃんも一人の人間ですから、ママにはどうしても汲み取れないことも、気持ちは分かっても、それに応えてあげられないこともあるでしょう。
そんな時は赤ちゃんにとって、この世の中は思い通りに行くことばかりではないということを学んでいる時です。いつもいつもそれでは、赤ちゃんはこの世界に対する自分の無力さを感じて、すべてを諦めるようになってしまいますが、ママが頑張ってもどうにもならない時はしかたがありません。
例え泣いていても、かんしゃくを起こしていても、それを慰めようとしてくれているママの愛情は赤ちゃんに伝わり、思い通りにならないことがあっても大丈夫なのだ、という強い心が育っていきます。
赤ちゃんの伸びようとする力を感じ取って
反対に、ママにとっても思い通りにならないことがあるでしょう。
人間には、胎内に命が芽生えた時から、一人の人として自ら成長していこうとする力が備わっています。胎児期、新生児、乳幼児期それぞれの時期に、人間として豊かに成長するために必要なことを順序よく吸収していけるように、様々な素晴らしい能力が備わっているのです。その、生まれよう伸びようとする力を感じ取れば、「子どもを育てる」というだけでなく「子どもが育つ」という視点もあることに気づくでしょう。
全ての中心がママだった胎児期、新生児期から、徐々に子どもなりの視野を持ち、自分なりの世界を築いていきます。その成長の中で赤ちゃんは自己主張を始め、ママの思い通りにはならないこともだんだんに増えていきます。
赤ちゃんの自己主張は、これからどんどん強くなっていくでしょう。それは「ママ、私の心に耳を傾けて!」というサインです。親の思い通りにさせるのが「子育て」、「しつけ」ではありません。反対に、子どもの思い通りにさせるのが「気持ちを汲み取ること」でもありません。
親も子も、自分の思い通りにならないことを通して、親としての姿勢を学んだり、子どもは関わりの基本を学んだりして、互いに成長していくのです。
予告すること、共感すること
赤ちゃんの気持ちを汲み取り、親の気持ちを伝えるコツは、赤ちゃんに予告をすることと、共感することです。
まず予告をするとは、今日の予定や都合をあらかじめ話してあげることです。赤ちゃんにも赤ちゃんなりの心づもりがありますから、今日は誰々に会うとか、どこどこに行くけど時間があんまりないから今日はちょっと急ごうねとか、そういう話をしておいてあげると、赤ちゃんなりに協力してくれるでしょう。
共感をするとは、赤ちゃんの気持ちを言葉に出して認めることです。赤ちゃんが泣いた時、ママはなだめることに一生懸命になって、「わかった、わかった」や「もう泣かなくて大丈夫よ」等の言葉で慰めていることが多いようですが、その前に、赤ちゃんの気持ちを言葉に出して言ってみましょう。
例えば、泣いているのにすぐに抱っこできずに、やっと抱っこしてもグズグズと言っている時は、「ごめん、ごめん」だけではなく、「ママを呼んでいたのに、すぐ来なかったから悲しかったね。ごめんね」と赤ちゃんが泣いてる理由を言葉にします。
痛くて泣いているときも「痛くない、痛くない」、「もう大丈夫よ」だけではなく、まず「痛かったね」と気持ちを認めてあげてみてください。
こうすることで、まるで魔法のように泣き止むでしょう。赤ちゃんは「気持ちを認めて欲しい」と思っているのです。やらせてあげられないことを要求して泣いている時も「これがしたいね」、「これが欲しいね」と共感して、それから「でも○○だからダメなのよ」と話してあげるといいでしょう。